弊社では、大手ゼネコン各社様からのご依頼を受け、建築施工図作成を中心とした業務に携わっています。
この記事では、これから始めてAutoCADを使う建築業界の方に向けて、AutoCADでは何ができるか、どのように使えばいいかを分かりやすく解説していきます。
AutoCADとは、米国のAutodesk社が開発している汎用2次元CADソフトの名称で、作図の用途で使用されます。
建築業界や製造業界で幅広く使われており、業界のスタンダートともいえる汎用性の高いソフトとなっており、作図をしていく上で必要な様々な機能が実装されています。
弊社は建築設計事務所の為、建築業界でのAutoCADの使い方に絞って説明していきます。
とはいっても、いきなり細かい説明をされても分かりにくいかと思いますので、まずはAutoCADを使用していくうえで理解しておくべき、ソフトの全体像から説明していきます。
1. AutoCADは大きく2つの空間で構成されている
2つの空間とは、モデル空間とペーパー空間です。
モデル空間
AutoCAD画面左下のタブで切り替えることができます。
イメージとしては、モデル空間上で図面を描き、その描いた図面を紙(ペーパー)やPDF等に実際に出力する為にペーパー空間でレイアウト調整する、といった感じです。
それぞれを詳しく説明していきます。
まずモデル空間とは、実際に図面の要素となる線分や寸法、図形等(以下、これらをオブジェクトといいます)そのものを描く空間となっています。
基本的にはオブジェクトを実寸法で描くのが一般的です。また、モデル空間は1つの図面ファイル(拡張子はdwgです)に対して1つしか存在しません。
ペーパー空間
そしてもう一つがペーパー空間です。
ペーパー空間とは、モデル空間で描かれたオブジェクトを出力する為にレイアウトをする空間となります。
たいてい図面を印刷する場合、1/50や1/100等のように縮尺して図面を出力します。
レイアウト空間では、その縮尺を自由に設定してオブジェクトを表示・レイアウトすることが出来ます。
例えばA1用紙サイズで1/50出力することを想定する場合に、レイアウト空間で用紙にうまく納まるようにオブジェクトの位置やサイズを調整することが出来ます。
また、モデル空間と異なり、レイアウト空間は複数作成することが出来ます。
基本的には図面1枚に対してレイアウト空間を1つ作成し、必要な図面枚数分だけレイアウト空間を増やしていくイメージです。
全体像が理解できたところで、次にモデル空間での図面の描き方を説明します。
2. コマンドを使って作図をしていく
AutoCADには様々なコマンドが用意されています。
作図する上で必要な機能がそれぞれのコマンドに割り当てられています。
コマンドの使い方としては、大きく分けて2つあります。
①画面上にあるリボンメニューのボタンを押して使用する
②画面下にあるコマンドラインに該当するコマンドをキーボードで入力する
まずは①で操作に慣れて、慣れてきた頃に②の方法に移行するのがオススメです。
基本的なものだと「線を引く」コマンドや、「寸法を入れる」コマンド、「コピーする」コマンド等です。
もちろん他にも様々なコマンドが存在し、最初は何を使えばいいか分からなくなるかもしれませんが、メインで使うコマンドは限られる為、すべてを把握しようとは考えず、まずは基本的なコマンドを使いこなすことを目標にすればいいかと思います。
参考までに、下記は使用頻度が高いコマンドの一部になります。()内は上述②の場合に入力する文字です。
・線を引く(LINE)
・移動する(MOVE)
・コピーする(COPY)
・削除する(ERASE) ※「delete」ボタンでも出来ます
・トリムする(TRIM)
etc
それぞれの細かい機能の説明はここでは割愛します。
では、基本的な作図の機能を説明したところで、次に建築業界で働くうえで知っておいた方がよい作図以外のAutoCADの機能を3つほど説明します。
3. 全てのオブジェクトは何らかの画層/レイヤーに割り当てられる
画層はレイヤーとも呼ばれ、AutoCADを使用する上で非常に重要な項目となります。
画層とは、簡単にいうとカテゴリのようなもので、線や寸法や文字等の各オブジェクトを簡易的に区別する為に使用されます。
この画層を各オブジェクトに割り当てることで、同じ線でも何を表す線なのかを区別することが出来ます。
図面には多くのオブジェクトで構成される為、この画層を使いこなさないと、作図作業の効率が大幅に落ちてしまいます。
下記は画層例の一部です。
例えば、躯体だけを修正したい場合、その画層だけを選択表示することで、他のオブジェクトを選択することなく修正することが出来るので、修正が楽になります。
(特に施工図では図面の情報量が多い為、このように必要なオブジェクトだけ抽出することは作業する上でとても大事になってきます)
他にも画層ごとに色・線種・線の太さ等を設定することが出来るので、作業する上で図面が見やすくなります。また、各オブジェクトを該当する画層に割り当てれば、色・線種・線の太さ等を一括で変更、設定することが出来るようになります。
以上が画層の簡単な説明になります。
建物規模が大きくなるほど、単純に一つの図面ファイルの情報量が多くなる為、画層を理解し使いこなすことは大事になってきます。
また、特に大型現場では、多くの人が一つの図面ファイルを使用する為、各オブジェクトを適当な画層に割り当てることを怠ると、他の人の作業にも影響が出てしまいます。
4. 繰り返し使われるオブジェクトがある場合に便利な「ブロック」
繰り返し使用される複数オブジェクトがある場合、オブジェクトの必要な部分だけコピーして、他の位置に張り付けるという方法もあるのですが、この方法だと、修正する必要があった場合に、すべて修正しなおさなければいけないというデメリットがあります。
そのような場合にブロックを使うと便利です。
オブジェクトをブロックでひとまとめにすることで、後に修正があった場合に、元のブロックを修正するだけで、モデル空間に配置されている、同じ名前のブロックのすべてに修正が反映されます。
先ほどの修正の手間を考えると、どちらが早いかは一目瞭然かと思います。
また、ブロックにすることによって、ブロック内の各オブジェクトを簡単には編集出来なくなる為、間違えて編集したり、消去してしまうようなミスも防ぐことが出来ます。
ブロックはとても便利な機能ですが、一つ注意しなければいけないことがあります。
各ブロックはブロックごとに名前を付けることが出来ます。当たり前ですが、同じ名前のブロックは同一ファイル内に存在できません。
ですので、例えば別のファイルにあるブロックをコピペで持ってきた場合に、もし同じ名前のブロックがすでに存在している場合、そのブロックは張り付けても上書きされません。
まとめてコピペする場合等にそのことに気づかないときもあるので十分注意しましょう。
5. 印刷する上で便利な印刷スタイル
先に解説した画層に関連して、AutoCADには”印刷スタイル”という設定があります。
簡単にいうと、各画層にあるオブジェクトをどのような設定(色、線種、太さ、等)で印刷するかを設定することが出来る、ということです。
印刷スタイルには
・名前の付いた印刷スタイル
・色従属印刷スタイル
の2種類がありますが、今回は色従属印刷スタイルを説明します。
先ほどの各画層に割り当てた色をもう一度見てみます。
赤枠に囲われた部分が、各画層に割り当てられた色です。
上の印刷スタイル(拡張子はctbです)では、各画層に割り当てられた色に紐づき、印刷時の色や線種、太さ等を設定できます。
例えば、上記の印刷スタイルの例では、色10と設定されている画層のオブジェクト(ここでは ”保留” 画層)は Red で印刷され、
他の色8,9,11,12が設定された画層では、Black の色で印刷されることになります。
線種や太さに関しても、画層の設定をそのまま印刷に反映させたり、印刷スタイルで上書きして設定できます。
つまり、印刷スタイルをうまく設定することで、モデル空間上のオブジェクトの表現と印刷時のオブジェクトの表現を使い分けることが出来ます。
ほとんどの線分を黒で印刷したいときに、モデル上の線分も全て黒だと、作図しているときに線分の区別がつきにくく、作業がしづらいですよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
AutoCADには様々な機能が備わっており、全てを把握するのは大変ですが、
上記のような基本事項を踏まえた上で学習を進めて頂くと、理解が深まると願っております。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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