弊社では、大手ゼネコン各社様からのご依頼を受け、図面に関わる業務に携わっておりますが、 特に建築施工図作成と調整を得意としております。
この記事では、建築図面の分類の中で、大きく「設計図」と「施工図」の違いって何?という疑問に対して、それぞれの目的やその内容等を説明いたします。
始めに、そもそも図面とは何かと言いますと、「情報を伝える手段」といえます。
仮に脳で想像した事が第三者に伝わるのであれば、図面は必要無いかもしれません。
しかし、現実は図面無しには情報を伝えることは不可能であり、建物の完成に図面は必要不可欠で非常に重要なモノと言えます。
それでは、「設計図」・「施工図」それぞれの説明をし、最後にその違いを説明します。
設計図とは
では設計図とは、大まかに言うと、
建物の発注主である施主の、どのような建物にしたいか、という意向を網羅し、建築に関連する法律と予算の裏付けを取った図面です。
法律に適合していなければそもそも建物を建てることはできませんし、施主と契約するには予算を明確にしておく必要があります。
具体的には、建物の大きさや仕様、梁や柱等の構造体の情報から部屋の分類やその仕上げ等の情報が図面に明記されています。
流れとして、まずは初期段階の基本設計図にて施主の合意を取り、実施設計図に移行します。
また、設計図は、一般的に大きく意匠図・構造図・設備図・電気図に分類されます。
(それぞれを英訳した頭文字をとってA・S・M・Eとも分類されます)
施工図とは
続いて、施工図とは何なのかについてお話し致します。
言葉のまま捉えてみますと、施工するための図面です。
設計図は先ほど説明したような大きな位置づけがあるのですが、設計図を業者が見てそのまま現場で施工できるかというと、それはなかなか難しいといえます。
なぜなら、業者がそのまま施工できるほど全ての寸法や細かな納まりがすべて網羅されている訳ではないのです。
逆に言えば、施工図が存在する理由はそこにあり、設計図をベースに、細かな寸法や施工可能な納まりが網羅された施工図が作成されます。
施工図作成が当たり前で無かった時代は、小規模であれば設計図で建てる事も可能でしたが、建物が大規模になり、情報が多岐にわたる昨今の建物では、調整された施工図無しには、建物を建てる事が出来ないのが現状です。
施工図を作成する上で、まずは、設計図上に明記されている情報を全て原寸で入力した総合図と呼ばれる図面が作図されます。
具体的には、先ほど説明した、4種類(A/S/M/E)の図面を重ね合わせし、初期の段階で施主の合意を取ります。
そののち、総合図をベースとして、業種毎に分類し、施工図を作成していきます。
しかし、総合図で重ね合わせしたときに、例えば、意匠図に明記してある仕上げを完成する為には、構造図に明記されている躯体の位置では成立しない、といったことがあったり、設備の配管が鉄骨梁の拡幅に干渉しているので、設備シャフトの壁を移動しないといけない、といったようなことが見えてきます。
上記はあくまで一例でありますが、そういった細かな納まりがすべて成立するように検討していくのが、施工図担当しての主な役割となってくるわけです。
そういった検討を通して、それぞれ肉付けして、改めて監理者の合意の元、施工図として発行されます。
施工図だけでも、かなりの情報量がありますが、実際には施工図では情報が足りない業種もあります。
例えば、代表的な例では、鉄骨・外装・建具・鉄骨階段・エレベータ-・PC等が挙げられます。
そういった業種については、更に専門的な情報を盛り込み、専門業種図として承諾された図面に、部品図等を追加作成し、承諾後初めて製作が可能となります。
梁や柱等の建物の主要構造に関わる大きな部品は、工場で製作されたパーツを、現場に搬入し組み立てて建物のフレームを作っていきます。
30年前であれば、現場にて鉄筋加工とか、型枠製作が行われていましたが、現在では、根切と製品の組み立て、コンクリート打設等、限られた作業のみが現場作業と言っても過言ではありません。
逆に言えば、工場で製作された部品がもし間違っていたら、作り直しとなり、工程に大きな影響が出てしまいます。
そのような事態にならないよう、施工図をベースに部品の製作図もチェックし、現場で施工できるかどうか、きっちりと検討していく必要があります。
従って施工図は、建物建設の最後の砦と言うほど、重要なものです。
施工業者は施工図に書かれている寸法・納まりを頼りに、建物のそれぞれの箇所を一つ一つ施工していきます。
それでは、施工図内に詳細に書かれている数々の寸法(数字)・各種納まりは、それぞれどのように決まっていくのでしょうか。
設計図の寸法は、納まりに関する仕様や詳細図を基に作りだされていきます。
しかし、先述した通り、設計図には施工において必要となる全ての寸法や細かな納まりが書かれているわけではなく、施工図段階では、原寸で書かれた設計図の押さえ寸法をそれぞれ、物理的に支障が無いか確認していきます。
では、その設計図で決められていない情報はどのように決められていくのかというと、ものにもよりますが設計者等との打合せの結果や建物のそれぞれの部分を担当する専門業者が作成した製作図を基に調整後決まっていきます。
例えば、鉄骨に関しての細かい寸法や納まりは、構造設計図を元にして、各鉄骨業者が作成する製作図をベースにして決まっていきます。そして、その寸法や納まりを基に施工図の内容が決まっていきます。
しかし、当然ながら鉄骨だけでは建物は成立しない為、躯体、内装、外装、設備、仮設など他のものとの取り合いを調整し、それを製作図に反映させる必要があり、施工図工をはじめとした担当者のチェックや検討が必要になります。
施工図の内容に期待されること
次に施工図は、どのような内容が盛り込まれていることが期待されているのか、寸法表記を例にとって具体的にお話しします。
考えるうえで大事なポイントは、そもそも施工図は誰が見る図面なのか、ということです。
例:便所詳細図
施工図の一種である「便所詳細図」を例に挙げたいと思います。
では、便所を施工する上でどのような種類の業者が関わっているのでしょうか。LGSを建てるLGS業者、建具を取付ける建具業者、壁や天井などのボードを張るボード業者、衛生陶器等を取付ける設備業者、床を仕上げる内装業者、間仕切ブースを取付けるブース業者、等といった様々な業者が施工をする段階においてこの便所詳細図を見ることになります。
したがって、その業者にとって必要な寸法が施工図において書かれている必要があり、かつその業者にとってそれらの寸法が見やすい図面を作成すると、施工がより円滑に進み、施工業者から品質の良い施工図として評価されることに繋がっていきます。
施工図と設計図の違い
施工図、設計図それぞれの図面に関しての説明が終わったところで、それぞれの図面の違いに関してまとめておきます。
簡単にまとめると、「施工図」とは設計図を基に作られる図面で、なおかつ内容は設計図よりも細かい情報が書かれている図面となります。そして、必要とされるシーンや目的も異なります。施工図が建物における実際の施工のシーンで担当する各業者に必要とされるのに対し、「設計図」はそれぞれの建物の施工に着手する前に、設計者によって建築主の要望や条件を関係法律と予算を検証した上で、情報をまとめた図面であります。
余談ですが、施工図と設計図とで使用される目的が異なるために、設計者や施工者との間ですれ違いが起こることもありますが、両者は建物を最後まで完成させるという大きな目的達成のために携わっている一員として、同じ方向を向いているといえるのではないでしょうか。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は施工図と設計図の違いについて解説させていただきました。少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
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